岩手県 岩洞湖(がんどうこ)付近の特異な地形
トピック1「早池峰山」で、火山のないはずの北上山地にあたかも火山のような地形があり、最も明瞭と思われるのが、岩手県の早池峰山南部から遠野市北部にかけての地域だということを述べ、この地域の等高線図を掲示しました。
また、火山のような地形は、1つではないと、ことわりをいれました。
ここで、見てみるのは、北上山地の中で、少し小縮尺の地図(千葉 2006)でみると火山のようにも見える別のもう一つの地形です。場所は、盛岡の北東20km程のところにある岩洞湖を中心とした一帯です。大縮尺の図は、図−1〜図−3のようで、これで見ると、かなり複雑な地形です。
図−1 岩手県 岩洞湖付近の高密度段彩等高線図(50%縮小版)
(国土地理院の数値地図データを利用して作成 :詳細は参考文献の欄に記載)
より大きな図をご覧になりたいときは、図−2、図−3をクリックしてください。
図−2 岩手県 岩洞湖付近の高密度段彩等高線図(75%縮小版)
図−3 岩手県 岩洞湖付近の高密度段彩等高線図(作成100%大版)
単純なカルデラ的地形といったものではありません。トヒック1でとり上げた早池峰山付近の地形とは大きく異なっています。この地形がどのように形成されたのか考えるために、等高線図に尾根線と谷線を書き加えた図4を作ってみました。
図−4 尾根線と谷線の記入図
さらに、尾根線と谷線のみを抽出して図−5としました。
図−5 尾根線と谷線の抽出図
これらの図から、この地域の尾根線や谷線は、概ね「楕円」のような形状のものが、いくつか重なり合っているようにみえます。尾根線・谷線を楕円の重なりと解釈すると図−6のような解釈が可能です。
図−6 岩洞湖付近の地形の解釈図
このような、同心楕円状の高まり・窪みを形成する過程はどのようなものなのでしょうか。
いろいろ考えて、今のところ、次の3つの可能性があるのではないかと思っています。
- 火山のカルデラ
- クレーター(隕石衝突孔)
- 風化 (山地が、真上からみて「玉葱状に」風化した地形)
本地域は、地質図などでは、早池峰東縁断層の北東側の葛巻−釜石帯の中・古生界の分布域で、ペルム紀や三畳紀の異地性の岩体を含む、主にジュラ紀の砂岩・頁岩から成ると考えられています。火山とは全く無縁の場所でなので、この点、火山のカルデラ説は著しく困難です。ただし、より新しい火山の水系が、平面的な形態を保ったまま、ほぼ鉛直の下方侵食で、基盤に、いわば、地形のレプリカを形成するようなメカニズムが可能ならば、いわば、「火山のカルデラのコピー」として、このような地形はあり得ると思います。
「風化」説は、構成地層が古い、山頂の高さはわりに揃っている (隆起準平原的=変動地形の要素よりも、組織地形の要素がより強く現れやすい) ので、可能性としてはあると思いますが、メカニズムが全く不明です。
クレーター説は、これも可能性としてはあると思いますが、一般には、地球上の隕石衝突孔の存在頻度は著しく低いと考えられているので、この点からは困難です。ただし、一つの楕円が別の楕円で、部分的に壊されているように見える点は、クレーターの重なりと解釈可能で、今のところ、この可能性が高いのではないかと考えています。
「かぐや」の成果などで、月のクレーター地形について、より詳しい情報が得やすくなっているので、少し月のクレーターについて学んでいこうと思っています。そうすれば、北上山地の特異な地形について何か有効な考えが得られるかもしれません。
等高線図の等高線の色と間隔
間隔 25m
色
0 - 175m 黒
200 - 375m 青
400 - 575m 黒
600 - 775m 青
800 - 975m 黒
1000 - 1175m 黄緑
1200 - 1375m 黒
1400 - 1575m 黄緑
1600 - 1775m 黒
1800 - 1975m 黄緑
参考文献
千葉 達郎 著 「活火山 活断層 赤色立体地図でみる日本の凸凹」 技術評論社 2006
p.13, p.40-41
国土地理院 数値地図50mメッシュ(標高) 日本−U
の内
594161 (渋民), 594162 (陸中山形), 594163 (藪川), 594164 (早坂高原)
594151 (鷹高), 594152 (外山), 594153 (岩洞), 594154 (釜津田)
594141 (盛岡), 594142 (大志田), 594143 (青松葉山), 594144 (害鷹森)
のデータを引用して図−1〜図3を作成しました。