地学 トピック3 (その1)



1 岩石や堆積物の古さと硬さ(固さ)の関係についての抽象論

1−1 総論

 始めは抽象論から入ります。
 岩石や堆積物の古さと硬さの関係についてみるとき、まず考えるべきことは、1つ目には「何を岩石や堆積物の硬さ(固さ)にするか」ということで、2つ目には、「岩石・堆積物の成り立ち方によって、古さ−硬さ(固さ)関係が一様ではない」であろうということです。まず、先に2つ目の事柄について考察していこうと思います。


1−2 岩石の種類によって「古さ−硬さ関係」がどうちがうか

1−2−1 岩石の種類分け

 岩石の成因によって、硬さと古さの関係は異なると思われますので、岩石の種類を成因別に分けるのが妥当です。今日、通常行われている岩石の分類は成因分類ですから、これがそのまま使えます。岩石は大きくは堆積岩、火成岩、変成岩に区分されますが、この大分類では、少し粗すぎるので、もう1段だけ細かい分類をします。

 堆積岩は、主に火山噴出物から成る「火山性堆積岩(物)」と、一般の「非火山性堆積岩(物)」に分け、火成岩は地表付近でできる「火山岩」と地下深い所でできる「深成岩」に分け、変成岩は地下深い所で広域的にできたと考えられている「広域変成岩」と、深成岩と関連が深いと思われる「接触変成岩」に分けて、計6種類の岩石について、各々の成り立ち方との関係で、古さ−硬さ関係について考えてみます。順序は広域変成岩、接触変成岩、深成岩、火山岩、非火山性堆積岩(物)、火山性堆積岩(物)の順にします。




1−2−2 広域変成岩の古さ−硬さ関係の推測

 原岩が動力(広域)変成作用、つまり、あまり高くない温度下で、高い異方性圧力を受けて形成された岩石 (注) です。したがって、変成時(形成時)に、大きな硬さの増大があって、その後は「風化による強度減」のようなことを考えなければ、特別強くなったり、弱くなったりする理由がないので、硬さの変化はないものと思われます。形成前、形成時、形成後現在までの時間経過を図−1のように、形成前のある時点をt1、形成開始時をt2、形成終了時をt3、現在をt4で表すとすると、t2-t3間で硬さが大になる方向の大きな変化があって、その後のt3-t4間はt3時の硬さがそのままずっと持続すると考えて良いでしょう。結局、「広域変成岩の硬さは古さに関係なく一定」と結論して良いでしょう。なお、t2-t3間の時間はおそらく相当に長いのだろうと思います。


図1−2−1 広域変成岩の時間−硬さ関係の推測



(注)高温低圧型の変成岩であっても、温度的には深成岩生成環境や、接触変成岩生成環境より低く、圧力的には、これらより高いと思われます。いずれにしても、高い異方性圧力が、この種の岩石の生成条件として重要でしょう。



1−2−3 接触変成岩の古さ−硬さ関係の推測

 原岩が、あまり高くない圧力のもと、マグマの高温にさらされて、非常な高温によって変成して形成された岩石です。形成の前半はおそらく高温にさらされるために、硬さの大幅減少があり、形成の後半で逆に温度低下とともに硬さの大幅増大があるものと推測されます。ただ、一旦形成が完了すれば、やはり、特別強くなったり、弱くなったりする理由はないので、硬さの変化はないものと思われます(図−2)。前と同様にt1からt4をとれば、t2-t3間の経過が異なるだけで、t3-t4間はやはり変化なく、「接触変成岩の硬さも古さに関係なく一定」とみなして良いでしょう。なお、t2-t3間の時間は、おそらく、さほど長くないでしょう。


図1−2−2 接触変成岩の時間−硬さ関係の推測



1−2−4 深成岩の古さ−硬さ関係の推測

 マグマが地下深い所で、ゆっくりと冷えて固まって形成された岩石です。マグマは大変やわらかいはずなので、t1をマグマの状態にあるときにとると、t1-t2間の硬さはほとんどゼロに近いでしょう。それが、形成時に冷却とともに大幅硬度増加し、一旦、形成されれば、あとはやはり硬度変化なしになるでしょう(図−3)。「深成岩の硬さも古さに関係なく一定」で良いでしょう。


図1−2−3 深成岩の時間−硬さ関係の推測



1−2−5 火山岩の古さ−硬さ関係の推測

 多分マグマから揮発成分が抜けた、溶けた状態の溶岩が、地表や地表付近で急激に冷やされて形成された岩石です。深成岩の形成過程と比較するとt2−t3の間が極端に短くなっているという違いはありますが、t3-t4で硬度変化なしは同じでしょう(図−4)。「火山岩の硬さも古さに関係なく一定」と推測されます。


図1−2−4 火山岩の時間−硬さ関係の推測



1−2−6 非火山性堆積物・堆積岩の古さ−硬さ関係の推測

 「原岩」が風化・侵食などで粉砕され、粘土・シルト・砂・礫などになったものが、特定の条件のところに集まったものが堆積物で、時間経過とともにこれが固まり、硬くなって岩になったものが堆積岩です。 これは、これまで見て来た他の岩石と異なり、原理的にはどの堆積岩も現在も形成の過程のただ中にあると考えられます。図に表記しましたが、仮の形成終了時 t3 は、 t4 すなわち 現在になります。


図1−2−5 非火山性堆積物・堆積岩の時間−硬さ関係の推測



 やわらかい堆積物は、積み重なると自重で少しおしつぶされ、少しだけ固くなります。この過程は地盤工学の分野で詳しく研究されていて、圧密現象として知られています。堆積物の最初の硬さの増大は圧密によってもたらされますが、これは、大抵数年以内に終わってしまう現象で、大変短時間のことで、また、強度増加も非常に微弱なものです。(ここで考えているような百万年単位ぐらいの見方では)

 次いで上載荷重による圧縮での強度増加や、構成成分の化学変化による強度増加が主な現象になっていくものと思われます。地質学の分野では、圧密を含む堆積物の硬化、岩石化の過程全体を「続成(ぞくせい)作用」といっています。

 続成作用がどのように進むかは、構成物の成分や、堆積環境がどのように変化していくかということで、様々な状況があり得るでしょう。堆積環境について少しだけ考えてみると、一連の堆積物がどんどん上に上に積み重なって数km程度になっているところもあれば、おそらく海進や海退が繰り返されて、時間的には、かなり長い間の堆積物なのに厚さは数100m程度にしかならないところもあります。前者はおそらく「海盆」の「堆積盆堆積物」で、後者はおそらく「大陸棚」の「陸棚堆積物」でしょう。一般論としては、同じスタートラインの堆積物は、全体がずっと厚い「堆積盆堆積物」の岩のほうが、厚さの薄い「陸棚堆積物」の岩よりより大きく圧縮されるので、より固くなると思われます。図の堆積岩1と堆積岩2の違いは、このような考えを表現したものです。ただし、堆積岩は強度増加し続けるので、スタートラインが古い「陸棚堆積岩」がスタートラインが新しい「堆積盆堆積物」よりずっと硬いということは、おおいに有り得ることです。

 非火山性堆積物・堆積岩については、「より古いものが、より硬い傾向がある」(=「より新しいものが、よりやわらかい傾向がある」)と推定できますが、単純な比例関係かどうかはわかりません。また、仮に比例関係であったとしても、バラツキは相当に大きいものと思われます。




 
1−2−7 火山性堆積物・堆積岩の古さ−硬さ関係の推測

 火山岩の性質と非火山性堆積物・堆積岩の両方の性質を併せ持っていると推定できます。マグマ起源の物質も含まれ、高温から急速冷却される過程での硬化が最初に起こるでしょう。だから、非火山性のものと異なり岩が出来始めた瞬間に、もうかなり硬くなっているでしょう。また、非火山性のものとは圧密現象の観点からも、かなり相違があると思われます。たぶん、火山性の堆積物では、圧密現象はほとんど起きず、いきなり、主に化学変化による硬化の過程に入っていくと思われます。やはり、堆積物・堆積岩なので、続成作用は働き続け、「より古いものが、より硬い傾向がある」はずです。


図1−2−6 火山性堆積物・堆積岩の時間−硬さ関係の推測



 「火山岩」の成分が多量にふくまれており、したがって、「古さに関係なく強さは一定」の成分も多分に含まれているので、おそらく、時間−硬さ増加関係の線の傾きは非火山性のものより緩いものになるでしょう。

 火山性堆積物・堆積岩は、「出来始めから結構硬く、時間とともに硬化するが、時間硬化の程度は低いだろう」という推定ができるでしょう。



1−2−8 岩石や堆積物の古さと硬さ(固さ)の関係についての抽象的結論

 ここで、これまでのまとめを述べておきます。

 「変成岩」、「火成岩」は、岩の古さに関係なく、硬さは一定で、「堆積岩・堆積物」だけが、より古い岩がより硬いという傾向がある。ただし、「堆積岩・堆積物」の中でも、火山性のものの「古さ−硬さ関係」は、非火山性のものの「古さ−硬さ関係」と少し相違があるであろう。

 というのが、抽象論の結論です。





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