地学・トピック11 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさ・密度・形のいびつさの関係

[初期掲載 2010年 7月]

目次

1 太陽系のいびつな星
2  星の密度と星の性質
3 太陽系の太陽以外の星々の大きさ、いびつ度、密度の計算方法
4 太陽系の太陽以外の星々の大きさ、いびつ度、密度の値
5 いくつかの星の密度計算の検算
6 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の関係

7 いびつな星のいびつ度と半径や密度との関係





8 まとめ








1 太陽系のいびつな星

 昔、マリナー9号の写真で、いびつな形の星があることに驚き、比較的最近「はやぶさ」がとった「イトカワ」の写真で、そのいびつ具合の大きさに驚かされたことが、「いびつな形の星」に関心を持つようになった理由です。




1−1 マリナー9号の写真

 かなり昔の話を少しします。アメリカは、1971年から1972年にかけて火星探査機マリナー9号で、火星の表面の詳細な写真を撮りました。この中で、地球にみられるのとごく似た峡谷地形がすごく印象的てしたが、それとともに、もう一つ驚かされたのは、火星の衛星フォボスとダイモスの写真で、これらの衛星が「球形」からかなりかけ離れた、変な「いびつな形」をしていたことです。私は、これらの写真をみるまで、漠然と星はほぼ球形なのだと思い込んでいたので、本当にびっくりしたわけです。



1−2 はやぶさの写真

 少し昔の話もしてみます。今年の7月に日本の小惑星探査機「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰還したことが大きな話題になりましたが、少し前「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に接近したとき、「イトカワ」の写真を送ってきました。これをみたとき(新聞で)、形のいびつささが、記憶の片隅のフォボスやダイモスのいびつさより、数段上だったことと、ゴツゴツした「岩状」の塊と、その間を埋める「砂状」のものの対比が鮮明であったことに、また、驚かされました。



1−3 星の大きさといびつさについての空想

 比較的最近、多分昨年の半ばぐらいだったと思いますが、「イトカワ」は大変小さい星で、フォボスやダイモスはそれよりはだいぶ大きいが、地球の月よりはだいぶ小さい星であるので、ひょっとしたら、「星の大きさと、いびつさの程度との間に関係があるのでは、と思いはじめました。そして、星の大きさといびつさを数値で表現して、たとえば反比例の関係にあるみたいなことがいえたら、面白そうといった空想をしてみました。

 この一文は、この空想を現実化してみる試みの中でできたものです。次に述べますが、それとは別に、地球の地殻やマントルはどうなっているのだろうという推測も試みていたので、この中で、物の密度がとても重要な値であるということを再確認したので、あわせて「密度」についてもみてみることにしました。









2  星の密度と星の性質

 星の密度がわかれば、星が主にどんなものでできているかのおよその見当をつけることができます。ここでは、この話をします。  


2−1 地球の地殻やマントルの性状の推測で再確認したこと

 地学トピック10で、アイソスタシーの考察などから、地球の地殻やマントルの物質の性状の推定を試みましたが、これを行っているときに、地球のような星の内部は、直接みることはできませんから、内部がどういうもので成り立っているかということを考えるとき、「密度」がわかれば、それだけで、おおざっぱには、ある程度の推測がつくということを再確認しました。





2−2 星の構成物に関係があるかもしれない種々の物質の密度

理科年表平成21年度版の単体の密度の表(p.371)から、いくつか抜き書きしてみると、つぎのようです。

  1.  常温では気体でも、温度が低くなると液体や固体の状態に変化するものがあります。このようなのものの密度が挙げられています。太陽から遠い天体では、温度は相当低いのが普通でしょうから、地表で気体のものが遠い天体では固体になっていてもおかしくありません。
     単位は、g/cm3です。
    1. -183℃の液体酸素 [O] ----- 1.144
    2. -273℃の固体酸素 [O] ----- 1.568
    3. -253℃の液体水素 [H] ----- 0.0708
    4. -260℃の固体水素 [H] ----- 0.0763
    5. -195.8℃の液体窒素 [N] ---- 0.808
    6. -252℃の固体窒素 [N] ------ 1.026
    7. -268.9℃の液体ヘリウム [He] ---- 0.125
    8. -273℃の固体ヘリウム [He] ----- 0.19


  2.  0℃の気体の密度は、単位を kg/m3として、示されています。1kg=1000gで、1m=100cmですから、1kg/m3は、0.001g/cm3です。
    1. 0℃の酸素(気体) [O] ------- 1.4291
    2. 0℃の水素(気体) [H] ------- 0.0899
    3. 0℃の窒素(気体) [N] ------- 1.2506
    4. 0℃のヘリウム(気体) [He] ----- 0.1785


  3.  20℃の金属単体などの密度は、次のようです。 単位は、g/cm3です。
    1. アルミニウム [Al] ----- 2.6989
    2. [Au] -------- 19.32
    3. [Ag] -------- 10.50
    4. 炭素(ダイヤモンド) [C] -------- 3.513
    5. 炭素(グラファイト) [C] --------- 2.25
    6. [Fe] -------- 7.874
    7. [Cu] -------- 8.96
    8. [Pb] -------- 11.35
    9. ニッケル [Ni] ----- 8.902


 また、種々の物質の密度の表(p.372)からも、いくつか抜き書きしてみると、次のようです。 単位は、g/cm3です。
  1. -40℃のアンモニア -------- 0.690
  2. 20℃のエチルアルコール ---- 0.789
  3. 海水 ------------ 1.01 - 1.05
  4. -194℃の空気 ----- 0.92
  5. 花崗岩 ---------- 2.6 - 2.7
  6. 普通ガラス-------- 2.4 - 2.6
  7. 凝灰岩 ---------- 1.4 - 2.6
  8. -80℃の二酸化炭素
    =ドライアイス ------ 1.565
  9. 氷(0℃) --------- 0.917
  10. 水晶 ------------ 2.65
  11. 乾いた砂 --------- 1.4 - 1.7
  12. 石炭 ------------ 1.2 - 1.5
  13. 木炭 ------------ 0.3 - 0.6
なお、この表で多孔質の木炭の値は、体積に孔の部分を入れた、みかけの密度です。


 また、種々の鉱物の比重の表(p.636-647)からも、いくつか抜き書きしてみると、次のようです。  比重は4℃の水の重さに対する重さの比なので、単位はありませんが、ここで、みているような、大雑把なことでの値そのものでは、g/cm3で示した密度の値と実質同じとみなしてかまわないでしょう。表の鉱物名の次の [ ] 内は、理想科学組成式です。
  1. シン砂 [HgS] ------ 8.1
  2. 黄鉄鉱 [FeS2] ----- 5.0
  3. 輝安鉱 [Sb2S3] ----- 4.6
  4. コランダム [Al2O3] ---- 4.0
  5. 赤鉄鉱 [Fe2O3] ------- 5.3
  6. 岩塩 [NaCl] ---------- 2.2
  7. 方解石 [CaCO3] --------- 2.7
  8. 苦灰石 [CaMg(CO3)2] ------------ 2.9
  9. セッコウ [CaSO4・2H2O] ----------- 2.3
  10. 鉄カンラン石 [Fe2SiO4] ------------ 4.4
  11. 緑れん石 [Ca2Fe3+Al2(SiO4)(Si2O7)O(OH)] --------- 3.4
  12. 普通角閃石 [Ca2(Mg,Fe)4Al(AlSi7O22(OH)2] -------- 3.0 - 3.5
  13. 石英 [SiO2] ---------------- 2.7
  14. 曹長石 [NaAlSi3O8] --------- 2.3
 普通に見られる岩石中では、SiとOを主成分とする珪酸塩鉱物が、普遍的で、この類の鉱物は、鉱物の中では、相対的に密度が低くなっています。SiとOだからなる石英の密度は、2.7g/cm3ほどです。密度が高い、金属や金属成分の多い鉱物は、「鉱床」といった特殊なところに偏在しているといって良いでしょう。


 Sを含む硫化鉱物や、Siを含まず、Oを含む酸化鉱物は相対的に密度が高い傾向があるようです。おなじ金属、鉄を含む鉱物でみると、硫化鉱物の黄鉄鉱は、5.0g/cm3ほどで、酸化鉱物の赤鉄鉱は5.3g/cm3ほどです。鉄と珪酸成分のみからなる鉄カンラン石では、4.4g/cm3ほどありますが、多くの珪酸塩鉱物では、AlやNaやCaやKなどの成分が含まれており、これらがふくまれると鉄と珪酸成分のみより、密度が下がります。緑れん石や普通角閃石にも鉄Feも含まれますが、これらは非常に複雑な多くの成分から成る化合物で、密度は緑れん石で、3.4g/cm3ほど、普通角閃石で、3.0 - 3.5g/cm3と相対的に低くなっています。




2−3 氷、岩、金属の密度

 以上かかげた資料から、星の表面付近にある水や気体の氷、岩石、金属のおよその密度は次のように考えて良いでしょう。氷の範囲は固体ヘリウムの0.2から、固体酸素の1.6までの間としました。岩石の範囲は、軽い凝灰岩1.4から、SiとOが含まれる鉱物である鉄かんらん石の4.4までの間としました。金属は、アルミニウムの2.7から、金の19までの間としました。星の氷の成分の候補としては、水の氷や二酸化炭素の氷であるドライアイスの他、メタンやエタンの氷などもあるのではないでしょうか?

 単位は、g/cm3です。
     
  1. 水や気体の氷 ----- 0.2 - 1.6
  2. 岩石 -------- 1.4 - 4.4
  3. 金属 -------- 2.7 - 19


 また、液体は、1前後でしよう。

 同じ物質が星の内部にあるとき、大きな星では、それ自体の重みで、密度がより大きくなっている可能性はあります。

 星の構成物の主要なところ (気体の多い星でも、密度に関わる主要部分) は、固体になっているはずで、星全体の密度がわかれば、これを上の表と照らし合わせて、主要構成物が氷か岩か金属かを判断しても、概ね間違いないものと考えます。ただし、一般的には、星は層構造をしていて、中心が金属、その周りを岩石が覆い、更にその上の表面は、氷が覆うというようなことになっているはずなので、そのあたりのことは考慮しなければなりませんが。





 

3 太陽系の太陽以外の星々の大きさ、いびつ度、密度の計算方法

 検討の資料としては、「理科年表」の各種の表を用いたいと思います。



 

3−1 いびつな星の大きさと密度の計算方法

 理科年表の表では、いびつな星について半径ないし直径を「3軸不等」とし、3軸の半径 r1×r2×r3、または直径を、l1×l2×l3 の形で大きさを示しています。そこで、難しいことは考えずに、各軸の半径の単純平均を「近似半径」として、これで、この星の大きさを表示することにします。

近似半径=(最長軸半径+中間軸半径+最短軸半径)/3

です。半径が、この近似半径である近似球を想定して、この球の体積を近似体積とし、既知の星の質量を近似体積で割って、近似密度を計算することにします。




 

3−2 いびつな星のいびつ度の計算方法

 いびつさを示す「いびつ度指数」をやはり、3軸の半径を用いてつぎのように定義することにします。

いびつ度指数=(最長軸半径/最短軸半径)−1

 なお、いびつ度指数はパーセント表示にすることにします。


 球の場合は、最長軸半径は最短軸半径と等しいので、

最長軸半径/最短軸半径=1

になりますので、この場合に「いびつ度指数が0パーセントになるように1を引いていることは、理解いただけると思います。



 

3−3 惑星の衛星の密度の計算

 理科年表の表では、質量は惑星の表では、各惑星の質量を地球質量を1とした値で表示し、衛星の表では、各衛星の質量をその衛星の「母天体」の質量を1とした値で表示しています。地球の質量は、惑星の表の欄外に

5.974×1024kg

の値があたえられていますので、これをもとに各衛星の質量を計算できます。半径から球の体積が計算でき、質量と体積から密度が計算できます。

 今、例として、火星の衛星フォボスの質量近似体積を使った密度の計算をしてみます。

 火星の質量は地球を1とする表示方法で、0.1074です。そこで、kg表示では、

5.974×1024kg×0.1074
=6.416×1023kg

です、フォボスの質量は母天体を1する表示方法で、2.0×10-8 です。そこで、kg表示では、
=6.416×1023kg×2.0×10-8
=1.283×1016kg

になります。

フォボスの半径rは、3軸不等で、13×11×9 (km)なので、近似半径は、

r=(13+11+9)/3=11.00km

です。球の体積Vは、円周率πを用いて、

V=(4π/3)×r3
 
です。前述のように、近似半径で計算した球の体積をその星の近似体積にすることにします。フォボスの近似体積は、

V=((4×π)/3)×11.003   =5.5753×103km3

です。密度ρは質量/体積ですから、フォボスの近似密度は、

ρ=(1.283×1016kg)/(5.5753×103km3
 =2.30×1012 kg/km3

になりますが、単位のkg/km3は、

1kg/km3
  =1000g/(1000m×1000m×1000m)
  =1.0×10-6g/m3

1g/m3=1g/(100cm×100cm×100cm)
   =1.0×10-6g/cm3

1kg/km3=1.0×10-12g/cm3

になります。そこで、結局、

2.30×1012 kg/km3=2.30g/cm3

になります。

 フォボスの近似密度は、2.30g/cm3です。






4 太陽系の太陽以外の星々の大きさ、いびつ度、密度の値

 太陽系の太陽以外の星々の大きさ、いびつ度、密度の値を惑星、衛星、小惑星の順に検討してみます。



4−1 惑星と月

 惑星についての検討結果は表4−1−1と表4−2−2のようです。両者は内容は同じですが、表記の基準の大きさを地球を単位にするか、kmを単位にするかというところだけが異なっています。惑星は皆、球形なのでいびつ度の検討はありません。

表4−1−1 地球半径単位の惑星などの大きさと密度
(理科年表平成21年度版 p.78-79 太陽,惑星および月定数表より作成)



表4−1−2 km単位の惑星などの大きさと密度
(理科年表平成21年度版 p.78-79 太陽,惑星および月定数表より作成)





4−2 惑星の衛星と準惑星

 惑星の衛星と準惑星の大きさ、いびつ度、密度の値を検討しました。結果は表4−2−1のようです。


表4−2−1 衛星と準惑星と準惑星の衛星の大きさ・密度など
(理科年表平成21年版 p.80-81, p.88の表のデータおよびこれより計算した値)




4−3 小惑星

 小惑星の大きさ、いびつ度の値を検討しました。結果は表4−3−1のようです。小惑星の密度については、近くまで探査衛星が飛んだものについては、その運行などから測定されており、もとの表に測定値そのものが掲げられていますので、衛星について行ったような、めんどうな密度計算はありません。


表4−3−1 小惑星の大きさと密度と形のいびつさ
(理科年表平成21年版 p.91 小惑星の物理的特性の表より作成)





5 いくつかの星の密度計算の検算

 密度の計算では、星によって、かなり様々な値がでてきました。いちおう、念のため、いくつかの特徴的な値の星についての計算をチェックしてみます。



5−1 木星の衛星

 すでに、4−2に示した表で、計算済みですが、念のため、木星T イオと、木星V ガニメデの密度の計算を検算してみます。

5−1−1 木星T イオの密度の計算
 木星の質量は地球を1とする表示方法で、317.83 です。そこで、kg表示では、

5.974×1024kg×317.83
=1.89872×1027kg

です、イオの質量は母天体を1する表示方法で、4.70×10-5 です。そこで、kg表示では、

1.89872×1027kg×4.70×10-5
=8.924×1022kg

になります。 イオの半径は、1821 km なので、体積は、

V=((4×π)/3)×18213   =2.5294×1010km3

です。密度ρは、

ρ=(8.924×1022kg)/(2.5294×1010km3
 =3.53×1012 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

ρ= 3.53×1012 kg/km3 = 3.53g/cm3

になります。



5−1−2 木星V ガニメデの密度の計算
 木星の質量は、kg表示では、

1.89872×1027kg

でした。ガニメデオの質量は母天体を1する表示方法で、7.80×10-5 です。そこで、kg表示では、

1.89872×1027kg×7.80×10-5
=1.481×1023kg

になります。 ガニメデの半径は、2634 km なので、体積は、

V=((4×π)/3)×26343   =7.6559×1010km3

です。密度ρは、

ρ=(1.481×1023kg)/(7.6559×1010km3
 =1.93×1012 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

ρ=1.93g/cm3

になります。






5−2 土星の衛星

 土星については、密度が高いと計算された土星Z ヒペリオンと、逆にかなり低く計算された土星]T エピメテウスの計算を検算してみます。

5−2−1 土星Z ヒペリオンの密度の計算
 土星の質量は地球を1とする表示方法で、95.16 です。そこで、kg表示では、

5.974×1024kg×95.16
=5.68486×1026kg

です、ヒペリオンの質量は母天体を1する表示方法で、2×10-7 です。そこで、kg表示では、

5.68486×1026kg×2×10-7
=1.137×1020kg

になります。 ヒペリオンの近似半径は、144.33 km なので、近似体積は、

V=((4×π)/3)×144.333   =1.2595×107km3

です。近似密度ρは、

ρ=(1.137×1020kg)/(1.2595×107km3
 =9.03×1012 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

ρ= 9.03g/cm3

になります。



5−2−2 土星]T エピメテウスの密度の計算
 土星の質量は、kg表示では、

5.68486×1026kg

でした。エピメテウスの質量は母天体を1する表示方法で、1×10-9 です。そこで、kg表示では、

5.68486×1026kg×1×10-9
=5.685×1017kg

になります。 エピメテウスの近似半径は、59.67 km なので、体積は、

V=((4×π)/3)×59.673   =8.898×105km3

です。密度ρは、

ρ=(5.685×1017kg)/(8.898×105km3
 =6.398×1011 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

ρ=0.638 g/cm3 ≒ 0.64 g/cm3

になります。






5−3 冥王星の衛星

5−3−1 準惑星 冥王星の衛星、冥王星U ニックスの密度の計算
 冥王星の質量は地球を1とする表示方法で、0.0023です。そこで、kg表示では、

5.974×1024kg×0.0023
=1.3740×1022kg

です、ニックスの質量は母天体を1する表示方法で、4×10-5 です。そこで、kg表示では、

1.3740×1022kg×2×10-5
=5.496×1017kg

になります。 ニックスの半径は、22 km なので、体積は、

V=((4×π)/3)×223   =4.4603×104km3

です。近似密度ρは、

ρ=(5.496×1017kg)/(4.4603×104km3
 =1.2322×1013 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

ρ= 12.32 g/cm3

になります。



5−3−2 準惑星 冥王星の衛星、冥王星V ヒドラの密度の計算
 冥王星の質量は、kg表示では、

1.3740×1022kg

でした。ヒドラの質量は母天体を1する表示方法で、4×10-5 です。そこで、kg表示では、

1.3740×1022kg×4×10-5
=2.7480×1017kg

になります。 ヒドラの半径は、22 km なので、体積は、

V=((4×π)/3)×223   =4.4603×104km3

です。密度ρは、

ρ=(2.7480×1017kg)/(4.4603×104km3
 =6.16×1012 kg/km3

になります。単位を kg/km3から、g/cm3になおすと、

6.16 g/cm3

になります。



 計算に間違はないようなので、以下では、この値を適当なグラフにプロットして、その状態について見てみます。





6 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の関係




6−1 惑星の大きさと密度の関係

 図6−1−1に、太陽と惑星と月の半径と密度の関係図を、図6−1−2に、惑星と月の半径と密度の関係図を示してみました。これらの図は、多少、ばらついてはいますが、半径が大きいほど、密度が小さくなるということは、明瞭にいえます。小さい地球の方が、大きい木星より、密度では、ずっと大きくなっています。



図6−1−1 太陽と惑星と月の半径と密度の関係
   (理科年表 平成21年版より)




図6−1−2 惑星と月の半径と密度の関係
   (理科年表 平成21年版より)





6−2 太陽系の小さい星の大きさと密度の関係(全体)

 ここでは、太陽系の、太陽と惑星を除いた残りの星々のことを、「太陽系の小さい星」と呼ぶことにします。すると、この中には、太陽の周りを公転する準惑星や小惑星と、惑星や準惑星の周りを公転する、惑星や準惑星の衛星が含まれます。天体の運行状態は明らかに異なりますが、ここでは、この運行状態の違いは無視した扱いをすることにします。現在、どのような運動をしているかに関係なく、単純に、大きさ(半径)と密度のみに注目します。

 「太陽系の小さい星」で、半径と密度がデータから得られた全データをプロットすると、図6−2−1のようです。



図6−2−1 太陽系の小さい星の半径と密度の関係(全データ)
   (理科年表 平成21年版より)


 データのばらつきは、大きく、少数ですが、特に密度の大きい星は、他のものと区別して扱った方が合理的と判断されます。そこで、密度の大きい星 (密度 4.4 g/cm3以上の星) は、主に金属から成る星として、後で検討することとし、それ以外の星を岩石や氷の星として、この部分だけをプロットしてみることにします。






6−3 太陽系の岩石や氷の星の大きさと密度の関係

 岩石や氷の星だけのプロットは、図6−3−1のようです。



図6−3−1 太陽系の小さい星の半径と密度の関係(岩石や氷の星)
   (理科年表 平成21年版より)


 この図を見ると、左上側のデータのかたまりと、右下側のデータのかたまりに、データのかたまりが2分できるように見えます。そこで、全データから引いた、回帰直線を基準に、データを2分して、左上を岩石の星、右下を氷の星とみなして、おのおのについて、改めて回帰直線を引くようにしてみます。

 ここでは、主に岩石から成ると思われる星のことを岩星(いわぼし)と呼びたいと思います。そして、主に、氷から成ると思われる星を氷星(こおりぼし)と呼びたいと思います。さらに、主に金属から成ると思われる星を、少し無理がありますが、「金属星」と書いて、「かねぼし」と読むことにさせていただきます。





6−4 岩星(いわぼし)の大きさと密度の関係

 左上側の岩石の星のプロットは、図6−4−1のようです。



図6−4−1 岩石の星太陽系の小さい主に岩石の星の半径と密度の関係(13データ)
   (理科年表 平成21年版より)

 岩石の星の右下の2データは、他のデータと少し離れているように見えます。そこで、この2データははずして、他のデータのブロットをすると、図6−4−2のようです。


図6−4−2 太陽系の小さい主に岩石の星の半径と密度の関係(11データ)
   (理科年表 平成21年版より)

 この11データだけを抜き出した表は、表6−4−1のようになります。11データを岩星グループというと、岩星グループでは、惑星とは逆の、半径が大きいほど、密度が大きくなる関係が成立しているといえます。


表6−4−1 岩星の大きさと密度




6−5 氷星(こおりぼし)の大きさと密度の関係

 図6−3−1 太陽系の小さい星の半径と密度の関係(岩石や氷の星)の右下部分のデータのかたまりだけをプロットすると、図6−5−1のようになります。


図6−5−1 太陽系の小さい主に氷の星の半径と密度の関係
   (理科年表 平成21年版より)

 氷星のデータだけ抜き出した表は、表6−5−1のようになります。このデータを氷星グループというと、氷星グループでも、惑星とは逆の、半径が大きいほど、密度が大きくなる関係が成立しているといえます。


表6−5−1 氷星の大きさと密度










6−6 惑星と金属星(かねぼし)の大きさと密度の関係

 密度の高いデータは3点ありましたが、その内、Hydraを除く、NixとHyperionのデータは、ほぼ、惑星の半径−密度の直線の延長線上に乗るので、NixとHyperionを、金属星(かねぼし)と見做し、Hydraを岩星と金属星の中間的な特殊な星と見做すことにしました。

 つまり、このような扱いをすると、惑星と金属星(かねぼし)は、1つの星のグループを作っていて、このグループでは、岩星グループや氷星グループとは逆に、半径が大きいほど、密度が小さくなる関係が成立しているといえます(図6−6−1、表6−6−1)。


 
表6−6−1 惑星と金属星(かねぼし)の大きさと密度



図6−6−1 太陽系の惑星と高密度衛星の半径と密度の関係
   (理科年表 平成21年版より)







6−7 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の関係

 太陽系の小さい星のデータ(図6−2−1)に、惑星のデータも加えて、「太陽系の大きい木星から、小さいイトカワまで」の全部の大きさと密度をプロットすると、図6−7−1になります。


図6−7−1 太陽系の木星からイトカワまでの星の半径と密度の関係(全体 [データのみ])
   (理科年表 平成21年版より)


 また、太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の関係を表の形で整理すると、半径の大きさの順にならべると、表6−7−1になり、密度の大きい順にならべると、表6−7−2になります。これらの表では、今まで述べてきた、金属星、岩星、氷星の区別などを、各欄の背景色で表現しています(凡例参照)。


表6−7−1 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の表[半径順]


表6−7−2 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の表[密度順]


表6−7−1、表6−7−2の共通の凡例



 (地球型惑星を、「主に岩石から成る惑星」としましたが、正確には、「表層が主に岩石から成る惑星で、内部に相当量の金属が想定され、星全体としては、「岩石と金属の中間的な星」です。こう考えれば、岩石の密度の上限を 4.4g/cm3とした判断や、hydraを岩石と金属の中間的なものの星とした区分と矛盾しません。)


 太陽系の木星からイトカワまでの星の半径と密度の関係の全体の解釈図を、主な星名入で、図6−7−2に示しました。


図6−7−2 太陽系の木星からイトカワまでの星の半径と密度の関係(全体解釈図 [主な星名入])
   (理科年表 平成21年版より)

 太陽系の木星からイトカワまでの星の大きさと密度の関係についてわかったことをあらためてまとめると、次のようです。

  1. 太陽系の木星からイトカワまでの星は、密度で構成物を推定し、半径−密度図上の分布から
    1. 主に岩石から成ると思われる岩星(いわぼし)グループの星
    2. 主に氷から成ると思われる氷星(こおりぼし)グループの星
    3. 主に金属から成ると思われる金属星(かねぼし)と惑星を合わせた金属星・惑星グループの星
       の概ね3グループに分類できる。
  2. 3グループに属さない、中間型の星もごくわずかある。
  3. 各グループの半径−密度関係は、
    1. 岩星グループでは、 半径が大きいほど、密度が大きくなる関係が成立している。
    2. 氷星グループでも、 半径が大きいほど、密度が大きくなる関係が成立している。
    3. 惑星・金属星(かねぼし)グループでは、 逆に、半径が大きいほど、密度が小さくなる関係が成立している。
    です。







7 いびつな星のいびつ度と半径や密度との関係

 いびつな星のいびつ度と半径や密度との関係について検討してみました。



7−1 太陽系の小さい、いびつな星の大きさといびつ度の関係

 太陽系の小さい、いびつな星の大きさといびつ度の関係を検討するために、これらの星の一覧表を作ってみました(表7−1−1)。


表7−1−1 いびつなの星のいびつ度と、半径および、密度と、
       密度から推定される主な構成物 (半径順)


 表の中で、「密度データなし」としてあるところは、正確には「星の質量データなし」です。密度で、星の構成物の推定をしているので、これらのデータでは、構成物不明になります。ただ、金属星は非常に稀なので、不明星は、おそらく、岩星と氷星が半々になっているものと思われます。

 得られたデータ全部を半径といびつ度の関係でプロットしたのが、図7−1−1です。



図7−1−1 太陽系の小さい、いびつな星の半径といびつ度の関係(全体)

 これに対して、密度から、構成物が推定できたものをプロットしたのが、図7−1−2(岩星)と図7−1−3(氷星)です。



図7−1−2 岩石の星の半径といびつ度の関係



図7−1−3 氷の星の半径といびつ度の関係

 また、構成物不明のデータだけをプロットしたのが、図7−1−4です。


図7−1−4 構成物不明の星の半径といびつ度の関係

 これらを見比べると岩星で、いびつ度が大きな星が目立っています。また、半径の大きなところには、いびつ星はありません。不確かなことが多いのですが、これらの点に着目して、全データの解釈図として、図7−1−5を作りました。



図7−1−5 半径といびつ度の関係の解釈図

 太陽系の小さい、いびつな星の半径といびつ度の関係として、概ね次のようなことがいえるでしょう。
  1. これ以上大きな半径の星の中には、いびつ星は全然ないという、「いびつ星限界半径」(=最大半径)がある。
  2. 「いびつ星限界半径」の値は、km単位の半径を10を底にする対数で表示して、2.3前後である。
  3. 「いびつ星限界半径」より半径が小さい星のいびつ度には上限値があり、上限値は、半径(対数表示)と反比例するか、反比例に近い曲線になる
  4. 小さい星を氷星、岩星、金属星に分類すると、いびつ度が大きな値をとるのは、おそらく、岩星に限られる
  5. 岩星の中のいびつ度が大きな星のいびつ度指数は200%超に達する。
  6. 3データの氷星のいびつ度指数は、25%〜40%ほどである。
  7. 1データしかない金属星のいびつ度指数は、60%ほどである。

 半径といびつ度の関係は、始めに空想してみたような、反比例関係ではなく、いびつ度の上限が半径と反比例的で、星の構成物が何であるかによっても、いびつ度に影響が出るという検討結果になりました。



7−2 太陽系の小さい、いびつな星の密度といびつ度の関係

 太陽系の小さい、いびつな星の密度といびつ度の関係を表7−2−1と、図7−2−1にまとめて示しました。いびつな星の数はさほど多くありませんし、密度の計算できた星もそこそこの数なので、両方のデータともそろっているものはほんの少ししかありません。


表7−2−1 いびつ度指数の大きな星の一覧表 (密度の大きい順)



図7−2−1 太陽系の小さい、いびつな星の密度といびつ度の関係

 星の構成物による区分を合わせて、図7−2−2に示しました。やはり、星の構成物による違いははっきりしていて、岩星で、いびつ度が大きなものが目立ちます。



図7−2−2 密度といびつ度の関係の解釈

  1. 岩星は、球に近いものから、とてもいびつなものまであって、いびつ度の範囲が広い。
  2. 金属星の密度は大変大きいが、いびつ度はさして目立たない。
  3. 氷星は、密度が小さく、いびつ度もあまり大きくない。
ということぐらいは、いえそうですが、データが少ないので、この関係について、明らかなことは、あまりありません。







8 まとめ






  引用文献・参考文献

1 パトリック・ムーア、チャールズ・A・クロス著 斉田 博 訳 1975  火星
                     誠文堂新光社 p. 5, p.22-23, p.44-45

2 国立天文台 編  2008   理科年表 平成21年版(机上版)
                  丸善   天文部 p.78-81, p.88-91, 物理/化学部 p.371-372
                          地学部 p.636-647
     
3 国立天文台 編  2004   理科年表 平成17年版
             丸善   天文部 p.76-77

4 ジャイルズ・スパロウ(Giles Sparrow)著  桃井 緑美子(ももい るみこ) 訳 2008
                  太陽系惑星 最新画像のすべて
                          河出書房新社
p.12-13, p.26-47, p.88-139, p.151-161, p.172-193, p.197-201, p.208-209, p.213






  参考ホームページ

ホームページ1   JAXA(宇宙航空研究開発機構)ホームページ  「はやぶさ」のページ中のイトカワの資料

(このホームページには、興味深い記事が多数のっていますが、しぱしば内容が変更されているようで、固定的な資料としては、少し難点があります)